2024.12.11

サシバエに問題ついて その2

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改善策

ここからは実際に改善していくための方法について話していきます。最も始めやすく、重要となるのが衛生管理です。他にも科学薬品や粘着テープ、仕掛け罠、防虫ネット、飼料添加物を用いる方法があります。

衛生管理

衛生の管理をすることで75%のハエを予防することができます。そのためには、まず湿っている、腐敗した飼料等の有機物を除去する。また、幼虫の発生している箇所を見つけることも重要です。発見次第、除去し乾燥しているような状態にしましょう。少なくとも、週に一度のペースで清掃を行えると良いです。

また、農場周辺の成虫が休むことのできる草の影をなくすために雑草の除去が必要です。

糞便の管理については、堆肥化させることで熱を発生させ繁殖させない。また、幼虫は40~60%の水分を含む環境に生息しますので、ラグーンに沈めることで水の膜を作り繁殖を防止します。

化学物質

スプレーを散布することで成虫を殺すことができます。また、耳タグや“ダストバッグ”が効果的です。ハエによっては耐性を持つものもいますので、農場毎に効果的な薬剤を選択していきましょう。

↑ダストバッグの例

粘着テープ、仕掛け罠

テープや仕掛け餌により予防している農場は多いと思います。これらは、成虫に対して有効です。粒上の餌は濡れない場所、粘着テープは空気の流れが無く地面から1メートルの高さに設置するなど、正しい方法で用いましょう。

飼料添加物

添加物により、糞便に繁殖する幼虫に対処することができます。しかし糞便以外の繁殖場所、成虫の移動もサシバエの増加の経路があります。

サシバエに対する対処方法は一つではありません。成虫、幼虫ともに対策をしていく必要があります。

最後に

サシバエの牛群に対する影響は大きなものです。対策のためには、観察が必要です。牛の行動やハエの分布、環境などを観察し、一つずつ増加の要因を減らしていくことが必要です。そのために、今回挙げた対策を参考にしてみてください。

2024.12.11

サシバエの問題について その1

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サシバエによりフロリダでは年間3600万ドル、アメリカ全土で7億~10億ドルの損害があると言われています。日本の酪農家においても問題となっています。

サシバエによる問題としては、吸血によりストレスや感染病を伝播し、ストレスや採食の妨げ、牛群の密集により乳量が低下し、大量に発生すると貧血に陥る可能性もあります。

 

サシバエとは?

雌雄ともに吸血を行い、雌は10~14日で卵から産卵が行えるようになり、通常10分以内の新鮮な糞便に産卵。幼虫は糞尿の中で生存します。冬は蛹の状態で過ごします。また、一匹当たり20回の吸血を一日に行い、一回に付き1.5mgの血液を吸血することが分かっており、さらに、フィラリアや黄色ブドウ球菌、BLVなどを媒介するといわれています。

 

↑吸血するための口の形状が特徴

 

サシバエの好む環境

子牛や牛の餌場、飼料貯蔵庫、糞尿、湿った寝藁、サイレージなどの水分の多い飼料、またコンクリート上の糞便等の湿って動かない場所を好みます。また、成虫は草の影で休みます。

 

モニタリング方法

サシバエはどのくらいの数から問題となるのでしょうか?現在、乳牛では、一頭当たり100匹以上、肉牛では、200匹以上から生産活動に影響を与えるといわれています。
実際に農場にはどの程度のハエがいるのでしょうか。調べる方法は以下のようになります。
まずは、休んでいる牛を見つけ片側にいるハエの数をカウントしましょう。

1:A,B,Cのどれかに25~50匹

2:AとB、BとC のどちらかに100~125匹

3:A,B,Cを合わせて200から350匹

4:A,B,C合わせて500匹以上

片側に50匹以上が基準となりますので無作為に10頭程選びカウントしてみてください。

また、牛が集まり行動している、皮膚をなめる、ピクピクしている、尻尾を振る、急に走り出す等の行動も基準になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024.11.29

子牛のIgG測定③~第二四半期顧客全体評価~

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皆さま

新人の大澤です。

前回に引き続き、2024年第二四半期の子牛のIgGの測定結果を報告していきたいと思います。

今回は、2024年7月からの9月(第二四半期)の顧客全体の評価についてお届けします。
3か月で134頭の子牛のIgGを評価しました。

下記に示したグラフは全体:2024年4月~9月、①:同年4月~6月(第一四半期)、②:同年7月~9月(第二四半期)について示しています。第二四半期の弊社顧客全体の平均IgG値は27.1g/Lで最大値は64.6g/L、最小値は0.0g/l、中央値は25.0g/Lと推移しました。

第二四半期の成績が第一四半期より低下していた要因として夏場のヒートストレスが関与しているのではないかと考えています。

また、今回、品種別のIgGの結果も整理しましたが、ホルスタイン種、F1、和牛で、大きく分布が異なることはありませんでした。(表なし)

ここで、なぜ初乳の摂取が大事なのでしょうか?

子牛は生まれた当初、免疫機能はほとんどなく、初乳による移行抗体に依存しています。

移行抗体の成功メリットととして、

  • 子牛の疾病発生率の低下
  • 初産分娩月齢の低下
  • 増体率、初産・2産乳量の向上
  • 初産期の淘汰率の低下

などが挙げられます。

これらは疾病の発生が減少することで、発育に重要な時期に成長を促すための栄養素が節約されることに起因すると考えられます。

また、初乳の摂取の遅れ・制限は子牛の腸内細菌叢の多様性の低下をまねきます。結果とし、消化効率の低下は短鎖脂肪酸(SCFA)の産生を低下させ、腸管上皮のターンオーバーの遅延(バリア機能の低下)をまねきます。また、SCFAは免疫(B細胞、制御性T細胞)の誘導を促進しており、SCFAの産生低下は免疫系の発達を遅らせてしまうことが論文上で考察されていました。

これから寒くなります。初乳摂取による移行抗体の獲得を成功させ、子牛たちを元気に発育させましょう。

今後も、IgGの検査、疫学評価を行っていく中で、関連情報の発信をしていきたいです。

参考文献

Daily Science 2024 L. R. Cangiano et.al Developmental adaptations of immune function in calves and the influence of the intestinal microbiota in health and disease

2024.10.03

牛のバンチングとは?

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初投稿となります。今年より入社いたしました永井佑季です。今回自分は牛のバンチングと呼ばれる行動について書かせていただきます。

 

短い夏が終わり涼しい日々が続いておりますが、農家の方々は暑い夏の時期に牛が牛舎や放牧地で固まるように集まって行動している様子を見たことがあると思います。これは「バンチング」と呼ばれ、牛群を管理していく上で一つの問題です。スペースに無駄ができてしまい、過密によるストレス、飼槽へ向かう回数が減ってしまう等のことにより生産効率が下がってしまうことが考えられます。

 ↑牛が一か所に集まっている様子

なぜ牛は固まるように集まってしまうのか?

バンチングは様々なストレスが原因で起こります。以下に4種類のストレスとその特徴を挙げます。

1:暑熱ストレス

気温やTHI(温湿度指数)が上昇すると牛が集まる。気温が下がると牛が分散する。

2:光の回避

特に暑い日に日陰に集まっている。日没後には集まっていない。また日没後でも、照明のくらい場所で集まっている。

3:新鮮な空気の不足

空気がしっかりと換気されていない。空気の流れが良い場所に集まっている。

4:ハエによる問題

頭を中央に、尻尾を外側に向けて集まっている。ガッティング反応(尻尾を挙げて走る)行動を示す。スラリー、糞尿側に牛がいない。

ストレスを軽減するためには?

1:暑熱ストレス

ファンや水をかけるソーカ―等冷却のための設備を整えることで暑熱ストレスを軽減することができます。新たに取り付けるだけではなく、例えば汚れているファンは最大40%風量が損なわれることもあるので、清掃を行うことでも改善が図れます。

2:光の回避

牛舎内の日差しが入る側に以下のような遮光カーテンを付ける。また、人工照明を清掃することで均等に光が当たるようにする。光の回避は他の暑熱ストレスや換気不足によるストレスに対する反応です。他のストレス要因の改善と併用することでさらに効果が得られます。

↑遮光カーテンの例

3:新鮮な空気の不足

吸気、排気を調節し新鮮な空気が牛舎内に回るようにする。スモークを用いて空気が滞留している部分を確認し改善できるとより良いと思います。

4:ハエが気になる

ハエの個体数をコントロールするため、繁殖場所である濡れてしまい、腐敗した飼料の除去等、施設全体を清潔に保つ。また周辺の草木の駆除やハエの駆除を行うことも重要です。

最後に

以上のことから、牛の行動を観察し原因を考えた上で、適当な方法を用いていくことでバンチングが改善されていきます。上記した通りバンチングが起きているということは、何かしらのストレスを牛群として感じているというサインです。快適な環境を作ることでストレスを軽減し、より良い牛群管理を行っていきましょう!

2024.07.30

子牛のIgG測定②~第一四半期顧客全体評価~

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こんにちは、新人の大澤です。

過去のブログにもある子牛のIgGに関する第二弾となっています。過去のURLを添付いたしますので、こちらもご確認ください

子牛における初乳中免疫グロブリン(IgG)獲得のための吸収効率(AEA)の測定とその要因

今回は、2024年4月からの6月(第一四半期)の顧客全体の評価についてお届けします。
3か月で147頭の子牛のIgGを評価させてもらいました。農場の皆様、ご協力ありがとうございました。

下記に示したグラフのように弊社顧客全体の平均IgG値は33.2g/Lで最大値は78.8g/L、最小値は6.0g/l、中央値は30.3g/Lでした。

次に弊社ではIgG値を4段階で評価しており(詳細は上記ブログ参照)、こちらはその結果となっております。

 

弊社がお客さんに提案しているゴールは、

①25g/L以上を7割以上

②18g/L以上は全頭クリア

です。

また初乳製剤を添加強化される農場においては、高すぎるIgG濃度もコスト面も配慮しようと伝えてもいます。

現在、顧客全体評価として、25g/L以上は全体の68%で、18g/L未満は18%と目標達成にはもう少しかかりそうです。

現在、弊社では移植業務も増えており、農場では黒毛和種の子牛が生まれてきており、今後、ホルスタイン種と黒毛和種を分けて評価していけたらと思います。

今後も、継続的に評価していき哺乳状況を評価とともに、健康な子牛づくりをアシスト出来たらとおもいます。

2024.07.17

アメリカで発生した牛の高病原性鳥インフルエンザについて

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皆様初めまして、2024年4月よりゆうべつ牛群管理サービスに入社した新人の大澤和正です。よろしくお願いします。

今回紹介する内容は2024年3月から注目されている牛の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)についてです。内容はアメリカ合衆国の米国農務省(USDA)の動植物検疫検査局(APHIS)のデータをもとに「発生状況とUSDAでの取り組み」「牛の症状」「予防、対策」に絞ってお伝えしたいと思います。


  • 発生状況とUSDAの取り組みについて
  • 2024年3月ごろ、アメリカの酪農場の搾乳牛からH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが検出したことから始まります。HPAIは基本的に牛から人への感染リスクは低いとされ、接触機会の多い人(農場の従業員など)では感染リスクが高いとされています(人への感染は4例でどれも農場の従業員)。このウイルス自体は哺乳類には高病原性はなく、鳥類に深刻な影響を与えます。アメリカでの発生州は12州(2024年6月時点)で、現在は移動時の抗体検査や、感染牛の移動の制限により新規感染をコントロールしています。
  • では、どのような牛が罹患しやすく、どのような症状が見られるのでしょうか
  • 経産牛でDIM100日以上の牛で発生が多く、「発熱、乳量の低下、乳からの凝固物、反芻時間の低下」が見られます。発熱は初期にみられ一時的であり、反芻時間は経過とともに回復しますが、乳量はもとに戻らないようです。また、乳汁にはウイルスが含まれていることがわかっており、低温殺菌で容易に殺菌できるため、牛乳の安全性に問題ないとされてています。治療は抗炎症薬と電解質の投与が行われています。二次的疾患のリスクのある牛では抗生物質の投与も行われました。

 

  • 発生予防としてできることは何でしょうか
  • 野生動物の侵入を防ぐことがあげられます。HPAIは水鳥などから広がっていくこと知られています。また、鳥以外にも南米のアシカ、キツネなどいくつかの野生の哺乳類からも検出されています。そのため、牛舎内への野生動物の侵入を防ぐことが対策の1つとなりえます。また、人為的な感染を起こさないことです。アメリカでは一人の従業員が複数の農場に勤務することや、同一車両が複数の農場に出入りしていたことにより蔓延してしまったと考察されています。

 

ここまでの情報は弊社で調べた内容の一部となっています。最近も新しいデータが出てきています。今後も情報を更新していき、皆さまに共有出来たらと思っています。また、参考に使用したUSDAのAPHISの牛の高病原性鳥インフルエンザについてのURLを下記に添付しました。良ければ、ご確認ください。

ソース
アメリカ農務省 動植物検疫検査局 牛の高病原性鳥インフルエンザについて
https://www.aphis.usda.gov/livestock-poultry-disease/avian/avian-influenza/hpai-detections/livestock

北海道紋別郡湧別町芭露450-3

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