2025.08.29
2025.8.28-8/29で北海道獣医師会に参加してきました。今年も興味深い発表がたくさんありました
蹄病関連、跛行管理に関する発表も例年より多く、私たちの業務とも通ずる内容もありました。個人的には、硫酸銅ではないフットバス用資材が気になりました。
学会では、発表を聞く以外にも、自分とは異なる地域で頑張っていらっしゃる先生方や専門で研究されている大学の先生との出会いの場でもあります
このような機会を、自分の糧にしていきたいです
今回の発表は、PAG検査で妊娠鑑定を行う弊社の顧客農場における、流産の発生状況と発生要因についてまとめた、という内容でした
1回目にPAG検査+でも2回目のPAG検査ーとなり、気づかずに空胎となっている牛が出るのがPAG検査の課題ですが、それがどれくらいの頻度で起きるのか?どんな牛で流産がおきるのか?を調べました
1回目のPAG検査で+だった牛の73%が2回目のPAG検査で+でした。そもそも2回目のPAG検査を迎える前に発情が来てしまったり、淘汰されたりした影響で、2回目のPAG検査へ進んだ牛が87%でした。これらの割合は、PAG検査での妊娠鑑定をする場合の1つの目安なのかもしれません
また、流産にかかわる要因を分析した結果、蹄病、群移動も流産とかかわっている可能性が示唆されました
今回の学会で、2回のPAG検査の間に蹄病治療の記録があると流産する可能性があるため、治療は引き延ばしたほうがよいですか?という質問ももらいました
治療が直接的に流産と関連しているよりは、蹄病が必要である牛というのは採食量が落ちたり、BCSがさがってやせていったり、栄養的に充分ではないことから妊娠維持できないのでは?と考えております。そもそも蹄病にさせないようにするのが、目標です
群移動も、牛の社会的順位が変動し、牛にとっては大きなストレスがかかり、採食量が落ちたり休息時間が減ったりするようで、このような状況と流産の関係がどのように関連するかはさらに検証が必要だと思いました
流産があると、その牛の空胎日数の延長もあり、経済損失も大きいです
現場ではこれを減らすことで、生産性を高められると思います
流産がどうしておきるのか?どんな牛で起きやすいか?もっと情報が必要だと感じます
乳汁PAG検査は税込660円程度でだれでも妊娠鑑定をできるわけですから、うまく活用すれば酪農家さんの武器となり得ると思います
もっと有効な使い方を模索していきたいです
下のPDFが発表した内容です
興味がある方は、のぞいてみてください
https://yubetsu-gyugun.com/wordpress/wp-content/uploads/2025/08/bc690fd59cc4abde29e78e5de2032804-2.pdf
学会の打ち上げとして、帰りに焼肉をおなかいっぱい食べました
来年も頑張りたいです
塩倉
2025.08.01
7/13-7/20の一週間、お客さんと6名でアメリカへ農場視察に行ってきました。ウィスコンシンと北海道は似ているのだろうと想定していましたが、個人的感想としては、違いました。今回、実際にアメリカの地で感じた違いや意外だったことを、いくつか書き残します
1.暑熱対策
気温は夏で30-35℃くらいだが、湿度は低い。なのに、飼槽やホールディングの水かけ設備はばっちり稼働していた。扇風機もしっかり動いていた
2.ゲノム検査を使う農場が少なかった
今回みた700頭以上の農場ではほとんどゲノム検査をしていなかった。しかし、後継牛は必要分のみとして、残りの牛からは肉用子牛の生産をするという考えは日本と同じであった。更新率は30-40%くらい。
成牛のホル判別を付ける牛の選定は、基本的には両親平均を活用していた、個体乳量をはかるセンサーを付けていない農場もあり、成牛の個体データがない場合もあるためなのかもしれない。
3.搾乳パーラーに人が少ない
いろいろな事情があると思うが、40頭ダブルで搾っている人は4人、12頭ダブルであれば1人、というような感じです。それでも、搾乳時間の延長は起きておらず生産性の高い搾乳作業でした。ポイントは、平均のミルクフローが速いことと、牛を無理やりパーラーに入れる作業の少なさ、一定の作業を繰り返すという点かなと思います
もちろん、ディッピングや前搾り、ふき取りの工程はちゃんとやっていました
4.乳房炎治療が少ない(ほとんどいない)
ベット環境が砂や戻したい肥のディープベットである農場が多く、牛がきれいだったことやストールサイズが小さめでベットの上に糞便がのるようなベットは少なかったです
出荷乳の体細胞も7万-11万というような牧場でしたから、すべてがこの管理なのかはわかりませんが、そういうレベルを日本でも農家さんと一緒に目指したいです
5.繁殖成績が良い
妊娠率は30-40%、受胎率55%くらいでした
判別精液の受胎率がおもった以上に高かったです
ダブルオブシンク、またはプレシンクオブシンクで初回授精を行い、VWP70-80日くらい農場でした
3回搾乳だから平均乳量も45kg-50kgなのだろうと思うところもありましたが、繁殖の良さも影響しているだろうと思いました
一部しか紹介できませんが、こんな感じです
参考にしていただければと思います。うちの会社に入って5年目となり、農場さんと様々な仕事をさせていただいているタイミングで、アメリカに行けたということが自分にとっては運命的だったと感じ、感謝しています。コンサルタントとしての姿勢やかかわり方、酪農にかかわるディーラーさんのことも含めて、たくさん見えてきたものがありました。農家さんたちが、10年後、20年後、30年後に描く未来を一緒に見ながらかかわっていき、一緒に挑戦していけたらなと思います。 塩倉
2025.02.17
これまで輸液療法を行うための意義や、子牛の状態の評価方法、輸液選択について説明してきました。静脈投与はあくまでも子牛自身が自ら飲むことができなくなってしまった場合の最終手段です。特に今のような冬場は下痢の子牛が増えてしまったりすることで、静脈内への輸液の機会が増えてくる時期であると思います。しかし、そういった輸液を行う場合に、合併症を引き起こしてしまう場合があります。その際の見ておくべき注意点について今回は説明していこうと思います。
長時間の輸液によっておこる問題の多くは子牛の観察不足によっておこります。例としては、輸液がなくなり凝固してしまう、ラインがねじれてしまい、閉塞してしまう等があげられます。長期にわたるライン維持は難しいため経口投与が望ましいです。
24時間以上吸乳反射が無い、下痢、脱水にある子牛では低体温が問題になります。さらに、寒い状況下での大量輸液は低体温を助長するため、できれば建物内等の暖かい環境下で輸液を行うことが望ましいです。寒い状況下では、輸液剤を温めていても長時間の輸液を行う場合低体温症を避けることは難しいです。
輸液が急速に投与し、血管内圧が上がることで肺水腫等の合併症を引き起こします。臨床兆候は、鼻汁、呼吸促拍、頻脈、咳、湿性の肺音があげられます。水分過剰による、肺、間質、脳浮腫の発生を防ぐためには80ml/kg/hより遅い速度が望ましいです。(50kgの子牛に対し1時間で4L以下)
貧血や低タンパク血症も起こり、血球容積15%以下で低酸素総タンパク質が4mg/dL以下でこれらの合併症が起こります。耳介静脈からの輸液において流量が制限されるため起こる可能性が低いとされています。
2025.02.17
輸液というと静脈に留置を入れることが一番イメージがしやすいと思いますが、経口で与える電解質も輸液療法の一つです。実際に自家治療を行っていく上で正しい選択ができるようこの章では説明していきます。
今回参考にした文献の著者が実際に使用しているプロトコルの簡易版についてです。
子牛が下痢を引き起こしている場合、重炭酸により体内のアシドーシスをコントロールする必要があります。子牛の場合8日未満の子牛のアシドーシスは重症化しないことが多く治療においても日齢を考える必要があります。
重炭酸イオン必要量=体重㎏×塩基欠乏mEq/L×0.5~0.6L/Kg
これが必要量の計算になりますが、下痢が継続している場合係数を1にすることもあります。下の図を参考にしてください。
30~60分以内に排尿や沈鬱、脱水の改善、最も注意してほしいのが吸乳反射の改善です。吸乳反射が回復しない場合は敗血症、臍炎、肺炎等を考える必要があります。
まずは、子牛の起立状態や状態を見てみましょう。起立可能か、また衰弱した様子はないかどうかです。次に前章で説明した、眼球陥没の程度や皮膚つまみテスト(図ではテントと表記)、吸乳反射等を確認してください。
静脈内投与を行う場合
補液量=脱水量%×体重Kg
上記の量を最大で80mL/kg/hで投与するが30~50がよく用いられます。(50kg の子牛に対して1時間当たり1.5L~2.5Lの速度)
下の図のフローと基準値を参考にしてみてください。
以上が実際に治療を行っていく上で参考にしてほしいことです。はじめの簡易的なプロトコルを基準にし、下の表を参考にしていただけたら良いと思います。経口電解質も輸液療法の一つであり、静脈投与はあくまでも経口での輸液ができない場合、自らミルクが飲めるまでの回復を促すものです。この治療プロトコルを参考により良い子牛の管理、下痢の管理の助けとなれれば幸いです。次の章では、輸液時の注意点を記載しますので、必ず読んでいただきたいです。
2025.02.17
前章では、子牛の下痢の病態について書きましたが、この章では実際の病態の評価方法について説明していこうと思います。前章で挙げた病態は、脱水、電解質異常、代謝性アシドーシスでした。今回説明する評価方法は上記3つに関して現場で行うことのできる方法です。
眼瞼と眼球の離れ具合を確認する。
脱水が起きると皮膚の弾力性が低下します。そのため皮膚をつまむと元の戻るまでの時間が長くなります。2秒以内に戻れば正常です。
脱水が起こると血液の循環が滞ります。そのため四肢にまで血液が回らなくなり、末梢の皮膚の温度が低下してしまいます。
吸乳反射は子牛が持つ反射行動であり、哺乳ボトルや指を口に当てると吸い始めます。この吸乳反射の低下は脳脊髄液の重炭酸濃度、塩基過剰、血液pHの低下と相関が認められていますので、反射の有無を評価しましょう。
脱水の有無にかかわらず、D-乳酸が代謝性アシドーシスの原因です。
中枢神経抑制はD-乳酸の増加によるD-乳酸の基準は2mmol/Lとされており、神経症状などの異常な症状を示す子牛の乳酸は10~11mmol/Lと約4倍の濃度となります。11.0±3.6では子牛は起立不能を示し、比較的健康な子牛では、2.4±2.1となっていました。
D-乳酸は運動失調、起立困難、眼瞼反射の抑制に関係しますので、これらの評価もしていけると良いと思います。
以上が現場で行うことのできる評価方法です。これらを正確に評価していくことで、実際に輸液の内容を考えていくことができます。日々の子牛の観察において少しでも参考にしていただけると良いと思います。次章では、実際の輸液の選択について説明していきます。
2025.02.17
子牛が起こす下痢は、農家の方にとって大きな問題です。下痢が長引けばその後の増体や最悪の場合、死ぬこともあります。下痢の重篤化を防ぐためには「輸液」による治療を行う必要がある場合があります。これから子牛の下痢と「輸液」についていくつかの章に分けて解説していきたいと思います。
子牛では生後4週間において多く下痢が認められます。原因としてはコロナウイルスやロタウイルス等のウイルス、大腸菌等の細菌、コクシジウムやクリプトスポリジウム等の原虫が考えられます。下痢を呈した子牛の小腸内には原因にかかわらず、大腸菌が増加しており、それに伴い腸粘膜に障害や菌血症を呈することがあります。また、代謝性アシドーシスを引き起こすことがあり、これは脱水を伴うものと伴わないものに分けられるます。
腸管分泌の増か、水分吸収の減少、腸管通過物の増加により引き起こされます。子牛の体重の75%は水分であり、細胞外液(血液や組織液等)は体重の45%を占めます。成牛よりも割合が高く損失に敏感です。下痢を呈する子牛は一日に13~18%、最大で21%の水分を失うこともあるとされています。
下痢により、水分の損失に伴い、ナトリウムとカリウムの損失が起こる。電解質濃度は、ミルク(水分)の摂取量低下により、血液濃縮が起こり見えにくくなっている場合もあります。上記に加え、血清中のグルコース、クロライドの低下も起こります。そして、完治後10日以内は電解質の不均衡が維持されます。
下痢を呈した子牛では、腸内細菌の過剰増殖が起こり、それに伴う消化管内の炭水化物の発酵により、D型乳酸が増加します。D型乳酸は代謝性アシドーシスの主な原因であり、運動失調や、中枢神経障害を引き起こします。また、D型乳酸は牛の肝臓ではあまり代謝ができません。
以上が子牛の下痢の主な病態となっています。「輸液」による治療は、脱水、電解質異常、代謝性アシドーシスを補正するために行います。病態を正しく理解することで、正しい治療を行っていけるようにしましょう。