これまで輸液療法を行うための意義や、子牛の状態の評価方法、輸液選択について説明してきました。静脈投与はあくまでも子牛自身が自ら飲むことができなくなってしまった場合の最終手段です。特に今のような冬場は下痢の子牛が増えてしまったりすることで、静脈内への輸液の機会が増えてくる時期であると思います。しかし、そういった輸液を行う場合に、合併症を引き起こしてしまう場合があります。その際の見ておくべき注意点について今回は説明していこうと思います。
長時間の輸液によっておこる問題の多くは子牛の観察不足によっておこります。例としては、輸液がなくなり凝固してしまう、ラインがねじれてしまい、閉塞してしまう等があげられます。長期にわたるライン維持は難しいため経口投与が望ましいです。
24時間以上吸乳反射が無い、下痢、脱水にある子牛では低体温が問題になります。さらに、寒い状況下での大量輸液は低体温を助長するため、できれば建物内等の暖かい環境下で輸液を行うことが望ましいです。寒い状況下では、輸液剤を温めていても長時間の輸液を行う場合低体温症を避けることは難しいです。
輸液が急速に投与し、血管内圧が上がることで肺水腫等の合併症を引き起こします。臨床兆候は、鼻汁、呼吸促拍、頻脈、咳、湿性の肺音があげられます。水分過剰による、肺、間質、脳浮腫の発生を防ぐためには80ml/kg/hより遅い速度が望ましいです。(50kgの子牛に対し1時間で4L以下)
貧血や低タンパク血症も起こり、血球容積15%以下で低酸素総タンパク質が4mg/dL以下でこれらの合併症が起こります。耳介静脈からの輸液において流量が制限されるため起こる可能性が低いとされています。