子牛が起こす下痢は、農家の方にとって大きな問題です。下痢が長引けばその後の増体や最悪の場合、死ぬこともあります。下痢の重篤化を防ぐためには「輸液」による治療を行う必要がある場合があります。これから子牛の下痢と「輸液」についていくつかの章に分けて解説していきたいと思います。
子牛では生後4週間において多く下痢が認められます。原因としてはコロナウイルスやロタウイルス等のウイルス、大腸菌等の細菌、コクシジウムやクリプトスポリジウム等の原虫が考えられます。下痢を呈した子牛の小腸内には原因にかかわらず、大腸菌が増加しており、それに伴い腸粘膜に障害や菌血症を呈することがあります。また、代謝性アシドーシスを引き起こすことがあり、これは脱水を伴うものと伴わないものに分けられるます。
腸管分泌の増か、水分吸収の減少、腸管通過物の増加により引き起こされます。子牛の体重の75%は水分であり、細胞外液(血液や組織液等)は体重の45%を占めます。成牛よりも割合が高く損失に敏感です。下痢を呈する子牛は一日に13~18%、最大で21%の水分を失うこともあるとされています。
下痢により、水分の損失に伴い、ナトリウムとカリウムの損失が起こる。電解質濃度は、ミルク(水分)の摂取量低下により、血液濃縮が起こり見えにくくなっている場合もあります。上記に加え、血清中のグルコース、クロライドの低下も起こります。そして、完治後10日以内は電解質の不均衡が維持されます。
下痢を呈した子牛では、腸内細菌の過剰増殖が起こり、それに伴う消化管内の炭水化物の発酵により、D型乳酸が増加します。D型乳酸は代謝性アシドーシスの主な原因であり、運動失調や、中枢神経障害を引き起こします。また、D型乳酸は牛の肝臓ではあまり代謝ができません。
以上が子牛の下痢の主な病態となっています。「輸液」による治療は、脱水、電解質異常、代謝性アシドーシスを補正するために行います。病態を正しく理解することで、正しい治療を行っていけるようにしましょう。