先週の2月15日(木)に北海道大学で行われた北海道牛受精卵移植研究会にシンポジストとして参加させてもらい、これまで3年弱実施してきたゲノムテストの取り組みを紹介する機会となりました。タイトルは「酪農現場から見たゲノムデータ」です。
2015年よりホルスタインのメス牛をアメリカのゲノムテストを使って遺伝能力を調べてきました。メス牛なら1頭約1万円で検査を受け付けております。
いままで1000頭以上のメス牛のゲノムテストを行ってきましたが、GTPIの高い牛から低い牛までおおきなばらつきがあります。平均で1822でしたが、高い牛は2700以上、低い牛は1000しかありません。一般的な(?)酪農家では1700前後の牛が多いように感じます。
酪農家ごとでのばらつきも大きく、AI事業体の交配プログラムを使っている方がGTPIの高い牛を多く飼っている傾向があるようでした。特にE農家は長年交配プログラムを利用していることの成果が一目瞭然です。
多くの人が興味があるのは、ゲノムの高い牛は本当に良い成績を出すのかという点だと思います。
上の3つのグラフは、ゲノムデータの乳量評価値と、Pedigree index(PI: 父牛の育種価と母系祖父牛の育種価から算出されるもの;血統情報)、母牛の305日補正乳量それぞれを横軸に、縦軸を本牛の初産時305日乳量としてプロットしたものです。これは1つの大規模な酪農場の初産牛のデータです。
実成績を一番予測できていたのがゲノムデータで、次にPedigree index、そして母牛の乳量が最もあてにならないものだという結果が出ました。血統情報や母牛の成績よりもゲノムを調べた方が、その牛の能力をより推定できることがこのグラフから分かります。
もう一つ紹介するデータは、死産率です。ゲノムの死産率が9を超える牛は実際の死産割合が異常に高いです。一方、Pedigree indexの死産率が高くても実際の死産率は高くありませんでした。このグラフを見て、ゲノムテストを使って死産率を減らす可能性の大きさを感じませんか。
発表スライドの一部を抜粋して紹介しました。